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拡大する矛盾(3) [卷之六游魚]

 このために為替レートは円高に転じ、百円=43ドル50セントに回復した。これと同期して金の保有量が増加に転じ始めた。緊縮財政で一時的に不況の度は増すかもしれないが、輸出が回復すれば不況から脱することができる。アメリカ合衆国の経済は堅調であるかに見えた。
 8月28日、浜口は「全国民に訴う」と題したチラシを作らせ、全国1300戸に配布した。そこには次のようにあった。

 今日のままの不景気は底知れない不景気であります。これに反して、緊縮、節約、金解禁によるところの不景気は底のついた不景気であります。前途晧々たる光明を望んでの一時の不景気であります。我々は国民諸君とともにこの一時の苦痛をしのんで、後日の大なる発展をとげなければなりません。

 経済界はこぞって浜口を歓迎した。
 これに対して政友党の水戸忠造は言った。

 国民挙って消費を節約すれば、他人の生産したものを買うことが減少すると同時に、自分の生産したものの売れ行きも減少する。言い換えれば経済政策全体の縮小に終わる。浜口首相も井上蔵相も我が国の公債総額が六十億円近くに上ったことを以て、あたかも国家の存亡に関する一大事の如くに宣伝し、現内閣はこれを整理を以て重要使命とするものであると吹聴し、この六十億円を一人当たりに割ってみれば九十円の借金を負っている、誠に大変なことと告げた。

 個人レベルの節約は消費を拡大するかもしれない。だが、国をあげて消費を節約すればどうなるのか――この批判は正論であった。
 11月21日、政府は「来年1月11日から金輸出を自由化する」と発表した。経済の縮小を以て景気の回復をねらうというのである。
 この日、株価は跳ね上がった。

  金の解禁立て直し   来るか時節が手を取って

 という「解禁節」までが流行した。
 これを受けて浜口は、自信満々で衆議院を解散した。与党民政党は273議席を獲得した。対して反対を唱えた政友会は174議席にとどまった。
 国民は金解禁を支持したのである。

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