So-net無料ブログ作成
検索選択

世代交代(2) [卷之六游魚]

 計算機から眼を転じて、社会を眺めることにする。
 景気は好・不況を繰り返しつつ、下降する傾向を示していた。政治は明治以来の露骨な藩閥偏重が終焉して「民」主体の政党が政権を担ったが、次第に「軍」主導の構図が明らかになった。つまることろ、全体としての見通しはバラ色ではなかった。 日本という国にとってこの時代は、政治・経済のターニング・ポイントというべき時期に当たっていた。世界史の観点でも「近代」を分析する上で重要なウエイトを占めるのだが、同時にいくつかの動きが錯綜し、かつ相互に連携し、姿を変えて現われる。ために史家は、この時機の再現にたいへんな苦労をしている。ときに端折ることがないでもない。
 国内におけるいくつかの動きとは、次のようなものであった。
 一つは国内における政治情勢の変化である。政党政治が終焉し、軍部が台頭した。1927年4月20日に発足した田中義一内閣から1937年1月23日に総辞職した広田弘毅内閣まで、正味9年9か月の間に成立した内閣は次のようであった。

 ●田中義一
   27年4月20日―29年7月2日(2年2か月)
 ●浜口雄幸
   29年7月2日―31年4月3日(1年9か月)
 ●若槻礼次郎
   31年4月14日―12月11日(7か月28日)
 ●犬養 毅
   31年12月133日―32年5月16日(5か月4日)
 ●斎藤 実
   32年5月26日―34年7月3日(2年1か月)
 ●岡田啓介
   34年7月8日―36年2月29日(1年7か月)
 ●広田弘毅
   36年3月9日―37年1月23日(10か月)

 2年以上続いたのは田中義一と斉藤実だけで、両者とも軍人だった。田中は陸軍大将、斉藤は海軍大将。岡田啓介も海軍大将で、このうち岡田は「二.二六事件」に遭遇しなければ、内閣の寿命を2年以上保つことができたかもしれない。浜口、若槻、犬養、広田といった政党を基盤とする文民内閣は、財界だけでなく軍部の支持を必要とした。
 大正期までは財界が政策を主導した。殖産興業、富国強兵、資本の蓄積、教育の振興、生活水準の向上など、取り組まなければならない課題がはっきりしていた。ところが第一次大戦がもたらした好況の構図は、
 ――軍事力=経済力
 であった。財界が軍部と手を結ぶようになった。すなわち海外における資産と利権の保全・拡大は、外交でなく軍事力によって実現されることになった。
 短命内閣が続いたのは、経済の混乱だった。
 不況が深刻化し、労働運動が空前の高まりを見せた。
 もう一つは国際情勢の変化だった。
 第一次大戦後に築かれたベルサイユ体制が揺らぎつつあった。経済と国際情勢が密接に関連し、その二つは軍事力を裏づけに展開されていた。主な歴史的事件でいえば、「金融恐慌」(1927年)、「山東出兵」(同)、「モラトリアム」(同)、「満州事変」(1931年)、「五・一五事件」(1932年)、「二・二六事件」(1936年)である。大正デモクラシーの時代から日中戦争へ、さらにいえば太平洋戦争への準備が進んだ時期でもあった。時代を色合いで表わすとすれば、この時期は「灰色」が似合っている。
この時期、政財界で鬼籍に入る人が多かった。

 1921年(大正十)9月、安田財閥の総帥安田善次郎が神奈川県大磯の別邸で国粋主義者朝日平吾に刺殺された。享年82。
 1922年1月、大隈重信没。享年83。
  同年2月、山県有朋没。享年83。
 1923年9月、加藤友三郎没。享年62。
 1924年7月、松方正義没。享年89。
 1926年1月、加藤高明没。享年66。
  同年12月、大正天皇崩御。享年47。

 ただちに摂政・裕仁親王が践祚し、新年号「昭和」が定まった。ために昭和元年は六日間しかない。
 こののちややあって、1931年11月11日に渋澤栄一が92歳で没した。
 武蔵国榛沢郡血洗島(埼玉県深谷市)(のち埼玉県大里郡8基村)の豪農に生まれ、徳川三家門の筆頭である一橋家に出仕した。水戸徳川家出身の一橋慶喜が第十六代将軍となるにおよんで幕臣に列し、パリ万国博覧会の日本代表使節(代表徳川武昭)に随行した。その際の見聞をもとに、1868年徳川家が明治政府から借用した五十万両余を元に事業家に転身した。
 渋澤は、第一国立銀行、王子製紙、大阪紡績、東京人造肥料、東京瓦斯、東京貯蓄銀行など五百を超える会社を設立した。明治の殖産興業はこの人物によるところが大きく、またその後の産業の振興にも渋沢家が深く関与した。この人物の死をもって、幕末維新の空気を知る者はほぼ地上から消えたといっていい。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

メッセージを送る

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。

×

この広告は1年以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。